地酒妖怪図鑑(その20)
お気に入りの居酒屋で時を過ごすのは、地酒ファンにとってかけがえの無い至福の時だ。
おいしい酒に絶品の肴。日本人に生まれた幸せをかみしめる瞬間である。
杯を重ね、満腹にもなって「そろそろ帰ろうかな。」と思い始めた時、こんな声が聞こえて来る事はないだろうか。
「もう一杯・・。」
「もう一杯だけ・・・。」
「もう一杯だけ。」
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もしもそんな声が聞こえて来たら・・・
妖怪「もう一杯茸(だけ)」の仕業だ。
:
「もう一杯茸」は飲み終わろうとする酔っぱらいを見つけるとやって来る。
テーブルの上に、どこからともなく生えて来て、しきりに「もう一杯だけ。」と囁きかけるのだ。しかも目立たないようにお猪口の形をしているからやっかいだ。
その声を、自分の心の声と勘違いした酔っぱらいは次々と“もう一杯”を注文してしまう。
そんな事が5杯ほど続いたら、完全に「もう一杯茸」にやられてしまう。
翌日はひどい二日酔いを覚悟しよう。
「もう一杯茸」は、幸せな酔漢に度を超えた酒を飲ませる事を楽しんでいる悪戯な妖怪なのである。
以前紹介した「後引き爺」とペアで出現したら、翌日は仕事にならない事請け合いである。
【もう一杯茸(だけ)】
生息場所:帰ろうとする酔客のテーブル。
撃退方法:自分の酔った状態を冷静に判断する事だ。ただし、酔っていると冷静になれないのがやっかいである。
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