青春18きっぷの旅とは。
旅というものは、どんな種類のものであれ様々な経験を得ますが、やはり「青春18きっぷ」の旅は格別なものがあります。
今年の夏の旅もまた、今後、何度も反芻するような思い出を作る事が出来ました。
青春18きっぷの場合は普通・快速列車しか乗れないわけで、旅の時間の多くを列車の中で過ごす事になるわけです。
この“なにもする事がなく車窓を眺める時間”、“旅先の地元で生活する人々が乗り込み、また降りて行くのを見やる時間”がなんとも言えず好きなのです。
これは目的地まで再短の移動手段である新幹線や旅客機では味わう事の難しい事で。
時には乗り込む列車を間違えたり、思いがけず混雑をしたりもするのですが、それも後になると決して不快な思いは持たないのですね。
ようやく立ち歩きが出来るようになったくらいの幼な子を、その祖父や祖母が線路沿いまで抱いて来て、電車が通るのを見せているのです。それを見る度、自分が幼い頃に、毎日のように祖母に連れられ電車の通るところを見に行った事を思い出しました。
昔も今も、老人と幼な子のコミュニケーションは変わらないのですね〜。
そんな事を思うのも、各駅停車の旅ならではです。
この旅で読んでいた小説家・中山可穂さんの東南アジア紀行文の一説が、今回の旅の気分と共通するところが多く、感慨深かったです。
【以下、一部抜粋】
ピカピカの観光バスを横目に見ながら、地元の人しか乗らないオンボロバスをひとりバス停で待ち、路線番号を見極め、正しく料金を払って、間違っていやしないかと行き先に目を光らせ、降りるべき場所を見失わないように緊張しつつ風景を眺めやるときの、あの不安の感覚がたまらないのだ。
ややおおげさに言えば、人生そのもののスリルを楽しんでいるのかもしれない。
自分は乗るべきバスに乗ったか。進みたい方向に進んでいるか。
もし乗り間違えたら、バスを乗り換えればいいだけのことだ。
運がよければ数分後に、悪くても一時間もすれば、バスは必ずやってくる。
それに乗り間違えたバスが思いもかけない美しい場所へ自分を運んでくれることだってある。
ハプニングを楽しむ余裕があれば、どんな困難も切り抜けられる。
まさに旅は人生そのものである。
(中山可穂:アジア・センチメンタルロード)
そんな今夏の旅でしたが、忸怩たる思いがひとつ。
それは最終日の京都滞在が長引き、到底翌日の仕事までに帰り着く事が出来なくなり、新幹線を使ってしまった事でした。
当然、快適な睡りの内に列車は東京駅のホームに滑り込んだわけですが、これは「青春18きっぱー」としては敗北を意味するのです(- -;)。
いつかはきっと「青春18きっぷ」だけで日本一周してやるぞ〜っ。
| 固定リンク
コメント
全国いろんな所へ敢えて夜行寝台とか船とかで、ゆっくり景色を観ながら旅をしましたが・・・速い乗り物で行くより遠くに来てる!感が全然違うんですよね。途中ガイドブックに載ってないような場所に感動したり、発見もある。
でも、帰りは飛行機や新幹線だったりしますf(^^;) さすがに疲れがねぇ〜(笑)
投稿: イケ | 2009/09/06 23:24
《イケさん》
夜行寝台も良いし、フェリーでの旅も良いっすね〜。
遠くへはどこまでも普通列車で行けそうなんですが、戻りがやっぱりきついですね。
行きとはルートを変えると良いかも?
また機会を見つけて旅に出るつもりです(^^)。
投稿: 地酒星人 | 2009/09/07 09:45
旅の醍醐味、何だか高解る気がします。
最近は時間も無いし体調も悪いしで、新幹線の出番が多いわ移動の時間=睡眠の時間だったりするわで、如何にも旅!といった雰囲気は味わえずにいますが・・・。
そのうち大井川とか銚子とか遊びに行きたいんだけどなぁ・・・。
それにしても、画像のビールが凄く美味しそうです。
京都は地ビールの種類が豊富ですよね。
それでも去年あらかた飲んだんですが、『もやしもん⑧』を読んでからまた飲みたくなっちゃいました。
話はガラッと変わりますが、以前お話したチベットの仏像展・・・正式には『ポタラ宮と天空の秘宝展』というらしいです。
そろそろ上野に来てる頃ではないでしょうか。
かなり見応えありますよ~♪
投稿: 第三酒徒サケエル | 2009/09/07 20:14
《第三酒徒サケエルさん》
おっしゃるように、各駅停車の旅は体力が必要ですね〜(^^;)。
列車が空いている状態でも、なかなか熟睡は出来ませんし。
なんとか体力を維持して、この形態の旅を続けたいものです。
『ポタラ宮と天空の秘宝展』、調べてみましたら間もなく始まるようですね!
興味深い展示品が多いので、是非鑑賞したいです♪
投稿: 地酒星人 | 2009/09/07 22:56
中山可穂さんの言葉・・・
何も知らないアメリカの土地で自分が感じたこと、そのままです。
このバスに乗ったらどこに行くかわからない。
車掌さんに「この辺でおろしてくれ」と言いつつも、自分の言葉が伝わっているか分からない。
バスが通り過ぎる一つ一つの光景が、くっきりと目に入ってくるんです。
今でもその緊張の間で見た光景はすべて、
忘れることはできません。。。
投稿: まき子 | 2009/09/07 22:56
《まき子さん》
国内のローカル線の場合、間違ってもさほど危機感は感じませんが(現に今回、奈良で迷いましたが:汗)、海外だと今まで使っていなかった神経が呼び覚まされそうですよね。
同じく中山可穂さんの文に好きな一節があります。
(以下、一部抜粋)
「異国で迷子になるということは、自分の正体が消えてなくなるということだ。
ほんの数分間にせよ、国籍も年齢も職業も喪失した、ただの不安の塊になる。
学歴も知識も経験も役に立たない、嗅覚だけが頼りの世界。
そういうエア・ポケットに紛れ込むためにわざわざ旅をしているのかもしれない。」
(中山可穂:アジア・センチメンタルロードより)
投稿: 地酒星人 | 2009/09/08 16:05
ブログ見つけました!
先日の会では、お世話になりました。
今後ともよろしくお願いします♪
ぜひ、「青春18きっぷ」だけで日本一周達成してください。
投稿: sophia | 2009/09/08 22:54
《sophiaさん》
先日はありがとうございました!
ブログも拝見いたしました!
白神山地の写真、素敵ですね〜。
またよろしくお願いします♪
投稿: 地酒星人 | 2009/09/09 07:40