アメリカ在住の映画評論家・町山智浩氏出演のラジオで始めて存在を知った映画です。
先日亡くなった映画俳優ポール・ニューマンの代表作「COOL HAND LUKE(邦題:暴力脱獄)」。
町山氏曰く、日本ではポール・ニューマンというと「明日に向かって撃て」や「スティング」が取りざたされるが、そんな映画はゴミだ、と。
ポール・ニューマンと言えば「COOL HAND LUKE」だし、ポール・ニューマンが死んだと言う事はCOOL HAND LUKEが死んだ、とアメリカでは認識されているとの事。
さらには、生涯に一本映画を観る必要があれば「COOL HAND LUKE」を観るべき、と力説されていて。
そんな名作が日本ではほとんど語られていないし、存在そのものがほとんど知られていない事に驚き。
レンタルビデオショップに行っても1967年製作のこの作品はラインナップに無く。
それでも無性に観たくなって矢も盾もたまらずAmazonでDVDをゲット。
本日、満を持して自宅で観てみました。
うん、やっぱり面白いし、感動・・・というよりは深く考えさせられる映画でした。
パーキングメーター壊しという、なんて言う事はない犯罪を犯して刑務所へ入所してくるルーク(ポール・ニューマン)。
いっつも無邪気な笑みを浮かべている彼ですが、牢名主の暴力や看守達の理不尽な支配に一切屈せず、微笑みを浮かべながら立ち向かう姿にこの世をあきらめていた囚人達の心に希望を与えます。
町山氏曰く、刑務所の中の「あしたのジョー」なんですね。
マンモス西がジョーに心酔したように、牢名主もルークの事を大好きになってしまう。
ルークの存在が有る事で刑務所の中に希望を見いだす囚人達なのですが、反面、それは管理する看守達にとっては面白くない事で。
看守達の目の敵にされながらルークは何度も脱獄を繰り返す。
その度に捕まってひどい扱いを受けるのですが、囚人達にとって、彼は無二のヒーローになるのです。
最期は管理側によって殺されてしまうルークなのですが・・・。
町山氏曰く、この映画のルークはキリストの暗喩である、と。
そこでアメリカの人々はこの映画に深い共感を覚えるようですね。
この世はわけのわからないルールで出来ていて、力の強い者(権力者)がそれを強いているだけなんだ、という事がメッセージとして放たれている映画なのです。
刑務所という形を借りて、世の中の仕組みをあぶり出しているというわけです。
いかにも60年代的なテーマであるとも思いますが、これはあながち古い主題ではなく、現代にも通ずるものをたくさん持っているのではないでしょうか。
ポール・ニューマンが亡くなった事を報じるアメリカのニュースでは、各社一斉にこのCOOL HAND LUKEの映像が使われたそうです。
「COOL HAND LUKE」、まったく古さを感じさせない社会的でソリッドな演出の光る映画です。
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