【会津センチメンタルジャーニー:壱】近藤勇墓参篇
会津へのひとり旅に行って来ました。
特にこれといった予定を持たない気ままな二泊三日の旅でしたが、どうしても訪れてみたい場所がひとつだけ有りました。
鶴ヶ城を見下ろす山の中に有るという、新選組局長・近藤勇の墓です。
近藤は慶応4年4月、東京・板橋において刑死します。
その後、各地を転戦し会津へやって来ていた新選組副長・土方歳三が盟友・近藤の墓をこの地に建てます。
墓碑に刻まれた戒名は会津藩主・松平容保から贈られたものと言われており、墓の場所は土方の指示によって決められたと伝えられています。
但し、斬首された近藤の首は京の三条河原にさらされ、胴は近親者によって東京に埋葬されました(この辺り、様々な説があります)ので、いわゆる墓というよりは、“碑”の意味合いの強いものと言えます。
では、何故そのような場所へ行きたいと思ったのか・・・。
一昨年放送された大河ドラマの「新選組!」。
この中で土方歳三役を演じた山本耕史氏が、かつてインタビューにこう語っていました。以下、要約。
「土方を演じるにあたって、日本各地の縁の場所へ行きました。どこも歴史のある土地だという事以外、特に思う事はなかったのですが、会津の近藤の墓だけは違いました。あそこには何かが有る。絶対に土方さんの何かが墓に埋まっている、と強く感じました。」
土方を演じた一俳優の持った印象であり、何の根拠も無い発言ではあるのです。
しかし、迫真の演技で土方そのものになりきった山本氏の発言です。自分の思い入れがかなり加味されているとは思いつつ、それでも会津の近藤の墓はこの発言以降、是非訪ねてみたい場所になりました。
それから約2年。ようやく会津を訪ねる機会を持てました。
近藤の墓は鶴ヶ城の東側、山中に有ります。
基本的に観光地ではなく、天寧寺という墓地の一角で、かなり険しい山道の中途に有る為、道に迷わないかがとても心配でした。
しかし会津若松ライオンズクラブによる案内標識が多数あり、ほとんど迷わずに山道を登って行く事が出来ました。
かなり険しい山道です。昨日まで降っていた雨によるぬかるみが心配でしたが、これはさほどでもなく。
それでも急勾配が続き、だんだん息が切れてきます。
額に汗が滴り落ちる。
途中、こんな看板も有り嫌な感じに。
雨の日だったら引き返したくなったかも。
会津若松ライオンズクラブによる案内標識が各所に。
これがなかったら、おそらく一人ではたどり着けませんでした。
感謝、感謝。
つづら折りの山道を足をふらつかせながら登っていると、少し道が下りに。
そのまま歩いて行くと、ありました。
重なる枝の中から見えて来ました、あれが墓所なのでしょう。
この写真、少し変わったハレーションの入った撮れ方をしました。
来訪を喜んでいただいたと理解いたしましょう。
左が近藤勇の墓です。
右が昭和63年に建立された土方歳三の慰霊碑。
貫天院殿純忠誠義士大居士
あらためて字面を追いますと、松平容保の近藤に対する好意、信頼が十二分に感じられる戒名ですね。
特に“貫天”という文字が印象的で、大河ドラマ「新選組!」のオープニングタイトルの青い空と白い雲の映像は、ここからイメージされたものではないのか、と感じました。
そして、この険しい山の上に墓を置いたのは土方の意志。
もちろん、やがて会津に押し寄せる官軍による詮索を恐れての事もあるでしょうが、この場所に決めた理由が土方の心の内にあったような思いがします。
墓所から木々越しに見えるのは会津若松の市街です。
この墓が特別の意味を持つ・・・。
それは、この墓をこの場所にあつらえた土方の意志、そして近藤にこの素晴らしい戒名を贈った松平容保の意志。
その二つの意志が、今なお明確に感じられるからではないのでしょうか。
:
;
;
;
どうしても訪れたかった場所。
ようやく念願かなって、身も軽く山を下って行きました。
麓近く、ふと空を見上げると。
そこにはまさにあの青い空と白い雲が広がっていたのです。
思わず、声を上げて笑ってしまいました。
:
:
貫天院殿純忠誠義士大居士
本当に良い名だなあ・・・。
| 固定リンク
コメント
>この場所にあつらえた土方の意志、そして近藤にこの素晴らしい戒名を贈った松平容保の意志。
↑そんな感じするよね!男の友情!!
自分もこのドラマ2回見ました!!
何かもう1回見たくなって来た!(笑)
投稿: イケ | 2006/09/18 21:13
名所・旧跡を訪れても、なかなか感情移入出来る場所は少ないんですが、この場所はその意味では秀逸でした。
墓の場所に着くまで誰にも会わなかった事もあって、一人で近藤と土方に会って来たような感慨を持ちました。
投稿: 地酒星人 | 2006/09/18 23:01
最後の青い空に白い雲の写真に
「貫天院殿純忠誠義士大居士」って
・・・じーんときてしまいました(涙)。
ダメです、こーゆーのには弱いです。
投稿: まき子 | 2006/09/18 23:26
《まき子さん》
近藤勇って、捕まってから処刑されるまでの気持ちが以前はよくわからなかったのですが、大河ドラマがその辺りを丁寧にすくってくれて、いろいろな謎がひとつに繋がった感じなんですよ。
もちろん史実とは違うかもしれませんが、近藤の事をとても親しく感じられるようになりました。
本当に青い空に白い雲の似合う、人がついて行きたくなるナイスガイだったのだと思います。
投稿: 地酒星人 | 2006/09/19 00:43