地酒星人には持論がある。
他の何でもない、ローリングストーンズの事だ。
ストーンズはカッコ良くない。
だからといって、カッコ悪いわけではない。
ストーンズは“カッチョイイ”のだ。
これは微妙なニュアンスだ。あくまでも、“カッチョイイ”バンドなのだ。
そして“カッチョイイ”からこそ、これだけ長くバンドを続けてこれたのだ。
カッコ良いバンドやミュージシャンは過去、たくさん居た。
その内の何人かはカッコ良いままに本人がこの世から去り、永遠にカッコ良くなった。
そういう意味で、初期ストーンズのリーダー、ブライアン・ジョーンズはストーンズの中で唯一カッコ良い男だろう。
しかし、人はカッコ良いままではいられない。生きながらえた“カッコ良かった”ミュージシャンはその後、悲惨である。
随分前だが、地酒星人はジミー・ペイジの公演に行った事がある。
あのカッコ良かったツェッペリンのジミー・ペイジはそこには居なかった。
ブクブク太ってしまった彼のステージアクションはまるで、
ギターを抱えて欽ちゃん走りをする葉加瀬太郎だった。
その点、今でもスリムな体型を維持してアクションにもキレを持つストーンズはさすがだ。
じゃあ、カッコ良いのか。
否。彼等をカッコ良いと言うには、あまりにも過去におバカな事をやり過ぎているのだ。
最近は丸くなったかもしれないが、以前には様々な事があった。
ミックがガールフレンドと居るところをしつこく追うパパラッチ。
遂にミックはキレてカメラマンに殴りかかる。
ところがこのカメラマンは柔道の達人でミックの攻撃を難なく避け、逆に一本背負いを仕掛ける。
したたかに地面に打ち付けられるミック。
かなわないと思ったか、痛む腰を抑えながら用意していたリムジンに逃げ込む。
去り際、カメラマンのカメラに向かって思いっきりアッカンベーをする。
そう、あのベロマークのように。
・・・ムチャクチャかっこ悪い。
良い大人が何をしてるんでしょう。当時おバカな高校生だった地酒星人からも「バカじゃねえの?」と思われていたのだ。
これは作り話ではない。この一部始終が連続写真として撮影され、当時のマスコミをにぎわせたのだ。
ジョン・レノンだったら、こんな事はない筈だ。
間違いなくカメラマンの鼻先に一発食らわせただろう。
70年代の頃、ミックのステージアクションはオカマの女王みたいだったし、キースの目は完全にラリッていて前歯が抜けた間抜けヅラだった。
しかし、そんなカッコ悪さもすべてまとめて彼等の魅力なのである。カッコ良いと悪いの中間としての“カッチョイイ”なのだ。
そう、“カッチョイイ”は“自由”という事でもあるのだ。
どうかストーンズを、“世界最強のロックンロールバンド”などと呼ばないで欲しい。
それよりは、“男はつらいよ”のおいちゃんが、寅が帰って来るのを「ばかだねぇ」と言いながら、それでも内心の嬉しさを押し殺した表情を作るように迎えたい。
妹のさくらのように、お兄ちゃん(ストーンズ)が大好きなのだから。
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