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2006/01/18

セピア色した映画が好き:2《無法松の一生》

昭和18年製作の名作。
「無法松の一生」はこの他にも戦後数度に亘ってリメイクされていますが、この第一作を一番に推す方が多いようですね。
私はこの作品しか観ていませんのでわからないのですが、この映画を超える事は並大抵ではないと思います。
阪東妻三郎主演(ご存知田村兄弟の親父さんですね)。
九州・小倉の荒くれの車引きと、陸軍大尉未亡人と息子の交流を描いた作品です。
物語自体も大変面白く日本人の涙腺を刺激するものなのですが、今回見直して驚愕したのが宮川一夫氏のカメラワーク。
クレーンを使用したいきなり物語へ没入させるトップシーンをはじめ、オーバーラップを多用した幻想的なシーンの数々。
単なる人情ものに終わらない、詩情あふれる作品に仕上がっているのは宮川氏の神業も大いに貢献していると思います。

さて、陸軍大尉の息子が怪我をしているのを助けた無法松。御礼にと陸軍大尉邸へ招かれます。
恐縮しながら松が燗酒をいただくのですが、その際に使用されていたのが、下の絵にある道具。
恥ずかしながらなんと呼ぶのかわからないのですが(火鉢?)、おそらくは炭火を起こし、その火によって鉄瓶の湯も湧かせるし燗もつけられるといった“一台数役”をこなせるスグレ物。
ホクホクと湧き上がる湯気が暖かそうです。
こんな道具を横に置いて、手をかざし暖まりながら燗酒をいただいたら、たまらんでしょうな。
muhoumatsu
恐縮しながら杯を受ける無法松と、燗酒用の道具(ヘタな絵ですみません)。

この映画を見直して驚いたのが、未亡人役を演じた女優・園井恵子さんの美しさ。
陸軍大尉夫人らしい品格がありながら、少女のような可愛らしさも併せ持っている素晴らしい演技でした。この女性なら、無法松が生涯をかけて見守り続けたいと思うだろうなと感じました。
この園井恵子さん、その後お名前を聞かないのでどうされたのかと調べてみましたら、残念な事に広島の原爆によってお亡くなりになっていました。
それも悲惨な最期であったようで、本当に残念な事です。合掌。

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コメント

なるほど~、近くにおいて置けばお燗もOK、っていう仕組みですね。
先日、囲炉裏を囲んだとき、同じような感じで
炭の近くに徳利をさしてお燗をつけてくださるのを見て
なるほど~っと思ったものです。
囲炉裏は動かせないけど、イラストのようなももなら動かせますね!

投稿: まき子 | 2006/01/18 13:09

なんかいろいろ調べてみたら長火鉢と言うみたいですね。
百万円を超す物から1万円台まで幅広い価格帯で売られているようです(^^)。
骨董屋さんなんかでも扱いがあるようですね。
いつかウチでもこんなので燗をつけたいなぁ。
でも、今の住宅だと換気に気をつけないと極楽行きになってしまいますね。

投稿: 地酒星人 | 2006/01/18 13:17

阪妻の作品、これまた意外に見てないんです。
宮川一夫というとたくさん歌舞伎を映画にしたものを撮られていますよね。無法松・・も見なくては!

「幕末太陽傳」見ました!最高!
感想をTBさせていただいたので、見てくださいませ。

投稿: あっき | 2006/01/18 14:29

この火鉢は、清水の次郎長親分や、江戸の火消しの親分も使っていましたね(?)。いまは、飛騨高山の民芸家具屋さん辺りをのぞくと売っているかなあ。
学生時代の親友で小倉出身のヤツがいます。その関係で小倉には10回くらい行ったかなあ。最初、驚いたのは夜の花町、みな無法松になった様に歩いているではありませんか。昔の小倉は気の荒い人が多かったですネエ。「バー」で誰かが「無法一代」や「花と龍」を歌いだすと、みな一緒になって、店中の人が歌いだしたりもしてました。
私の親友の学ランの背中には、「花と龍」前には「無法一代」という刺繍がされていましたっけ。

投稿: おっかん | 2006/01/18 15:27

《あっきさん》
宮川一夫氏と言えば、もう日本映画の歴史そのもののような方ですよね。
溝口監督とも良く仕事されてましたし、黒沢監督とも名コンビでした。
比較的最近では(それでも’86ですが)篠田正浩監督の「鑓の権三」が素晴らしい映像でした(原作が近松門左衛門ですね)。

幕末太陽傳の記事、拝見しますね〜。


《おっかんさん》
江戸の火消しの親分というと、新門辰五郎あたりでしょうか(^^)。
小倉での経験、良いですね〜。
店中で歌い出すなんて、それこそ映画みたいですね。
見てみたいな〜、その学ラン!

投稿: 地酒星人 | 2006/01/18 17:24

長火鉢、風情はありますが、毎回、炭を熾すのがしんどいかも。(笑)

先に紹介した燗どうこですが、「どうこ」は元々、火鉢やいろりの灰に挿し、湯を沸かして燗をする道具のこと。
銅でつくられたものが多かったようですが、骨董屋でもなかなかお目にかかれないものになりつつあるようです。

投稿: 燗酒おやぢ | 2006/01/19 12:32

たしかに炭を熾すのは手間ですね。
当然の如く、消さなければなりませんしね(^^;)。
そこで考えたんですが、前の記事でご紹介いただいた「燗どうこ」を、この長火鉢にセットして使うと一見昔風で風情があるんではないかと・・・。
多少は湯気も出るでしょうし(笑)。

投稿: 地酒星人 | 2006/01/19 13:55

昔、母方の実家に囲炉裏がありました。それから親戚の家に、陶器でできた丸い火鉢もありました。
炭を熾すのは大変だけど、一度熾したらその後はそれほどでもなんいですよ。なぜなら、消さないから。ほっといて、翌朝しょぼくなった熾火にまた炭や薪をくべるというのが普通のやり方でした。昔の家屋は障子やふすまがスカスカで中毒の心配もなく、火事の心配もあまりせず、おおらかなものでした。

小倉に、のべ8か月出向していたことがありました。飲み屋は安くてうまくて陽気でいいですよ。超新鮮な刺身に、あま~いたまり醤油をつけて食べるのは閉口しますが・・・カミさんのおやじさん(小倉出身)とカラオケに行くと、必ず「小倉うまれでぇ~、玄海そだちぃ~」聞かされます。

投稿: フットゴリ | 2006/01/19 18:54

>「小倉うまれでぇ~、玄海そだちぃ~」

イヨッ!!無法松!!
良いっすねぇ、村田英雄でしたっけ?(^^)。
そういえば小倉に行ってたんですよね〜。
良いなあ〜(ほとんど脳内は映画の舞台の明治のままだったりする)。

火鉢で思い出しましたが、母の実家で私が赤ん坊の頃、ハイハイをしていて炭を使っていた掘りゴタツに頭から落っこちた事があったそうです。
幸い火を消した後で無事だったのですが、もし火があったらどうなっていたんでしょうか(ゾッ)。

投稿: 地酒星人 | 2006/01/19 21:03

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受信: 2006/01/18 14:16

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