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2005/10/05

その日のまえに。

最近読んで、良かった小説です。
重松清・著「その日のまえに」。

この小説における“その日”というのは、人がこの世を去る日。
つまり、死ぬ日です。癌などの病によってこの世を去る人、あるいは去る人を見送る人、そして遠い過去にこの世を去っていった人への追憶を描いた短編集です。

小学生の時、重い病で死んだ嫌われ者の女の子を見舞いに行った時の追憶、そして後悔。
末期がんに侵された妻と一緒に、若い頃ふたりが暮らし始めたアパートを訪ねる話。
余命宣告を受けた主人公が、子供の頃、海水浴場で死んだ友達を思い出し、同じ海を訪れる話。

sonohiこの小説が胸を打つのは、ごく普通の人々が(本人であったり、家族であったり、友人であったり)、死と向かい合った時に感じるであろう動揺や混乱、諦観などをリアルに描き切っている事だと思います。
特に登場人物の年齢が今の自分とほぼ同じという点も、ことさら切実に感じられたところだと思います(著者の重松清さんは、まさに同年代だった)。
そして、決してドラマチックになり過ぎずに、さり気なくファンタジーの要素がちりばめられている点も好きなところです。

各短編の登場人物がやがて偶然に出会って行くクライマックス(クライマックスというほどの抑揚は無いが)は、本当にしみじみとして、透明感の有る優しさ・悲しさに支配されてしまいます。

この短編集はひじょうに展開が地味ですが、それでも人の心の機微を余すところ無く突いて来る作品ですね。
重松氏の小説はこれが初めてだったのですが、さっそく「流星ワゴン」も読み始めました。こちらも主題はひじょうに似ていて、家族や親しい人との何気ない日常が一番大切である事、そこに幸福があるのだという事を訴えて来ます。

毎夜、普通に晩酌が出来る瞬間にこそ幸福があるのだなあ、と思いました。

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コメント

彼の小説は、NHKでもドラマ化されていたように思いましたし、悪い意味じゃなくて大衆的ですよね。

(ちょっと思うところあり)私も読んでみようかなあ。ご紹介、ありがとうございます。

投稿: はんな | 2005/10/05 09:44

ほとんど知らない作家だったのですが、糸井重里さんがこの本を読んでボロボロ泣いたという事をサイトで知り、読んでみようかなと思ったのでした。
自分の経験と照らしても、ひじょうに丁寧に死に行く人と残される人の心情を描いていると思います。

投稿: 地酒星人 | 2005/10/05 09:59

物語ではなくて、追悼(実話?)だから
より心に沁みるんでしょうね。
泣ける本って、結構好きです。
読んだ後が、なぜかスッキリするんですよね。
関係ないですが、涙の中にはストレスの原因になる成分も含まれているそうです。

投稿: まき子 | 2005/10/05 12:51

>涙の中にはストレスの原因になる成分も含まれているそうです。
ほお〜、そうなんですか。
そういえば子供の頃大泣きした後って、なんか清々しかった記憶があります。

投稿: 地酒星人 | 2005/10/05 13:31

こういう記事を書けるところが、
私などと比べるとワンランク(だけじゃない?)上だなと思ってしまいます。
死というものが結構身近に感じられる年になり、
それに対して結構鈍感な自分に驚く時があります。
きっと、一番下の娘がいなければ、
生への執着はもっと薄れていたでしょうね。
これが老いるということなのかな~と思ったりします。
おっと、まだまだ老け込んではいられませんが・・・・・・・

投稿: みみず | 2005/10/05 21:55


↑まき子さんの「涙にはストレスの原因になる成分が・・」っていうの、前にためしてガッテン!で実験してましたよ。
女の人はテレビみてすぐ泣いたりするから、男の人よりストレスたまらないらしい。

普通に飲めるのって本当に幸せですよね・・。毎年健康診断が近付くたびに、来年もこんな生活で大丈夫かな??と思ったりします。

投稿: hirorin | 2005/10/05 22:31

《みみずさん》
何をおっしゃいますか!みみずさんこそ、いつも話題が豊富ですよ〜。みみずさんが一本の記事にするところを私は2〜3本に分けているだけです。
健康には最低限注意して、ずうっと酒の呑める体でいたいところですね〜。
(死ぬ三日前まで晩酌が出来るようにしたい。)


《hirorinさん》
>女の人はテレビみてすぐ泣いたりするから、男の人よりストレスたまらないらしい。
そうか〜。じゃ、今度から悲しかったらすぐ泣くようにしよう。アクビの涙じゃ駄目なんでしょうか。
hirorinさん、酒量は間違いなく私より多いので、呑み過ぎには気をつけてくださいね〜。

投稿: 地酒星人 | 2005/10/05 23:15

「家族の死」「友人の死」って、誰もが経験している事で、年齢を重ねると「自分の死」という事も意識しますよね。
日常生活では忙し過ぎて、その瞬間でしか感じない事を小説にすると、各自の想いと合わさって入り込んでしまいますよね。

年を取り涙もろくなってきた自分には、人前で読むには「危険な1冊」です・・・。

投稿: 山輝亭 | 2005/10/06 06:56

>年齢を重ねると「自分の死」という事も意識しますよね。
そうですね。そういう事もあって、この小説がとてもリアルに感じられるんだと思います。

>人前で読むには「危険な1冊」です・・・。
はい。その意味ではひじょうに“危険”な本だと思います。(^^;)

投稿: 地酒星人 | 2005/10/06 07:58

ちょっと出遅れたネタですが、重松清作品のなかでは、「中年ゴジラ」も好きです。「泣かせる本を書かせたら日本一」と評価の高い重松氏ですが、これはちょっと笑わせてもくれるところが好き。でも、泣けるんだけど。

中年の悲哀って、不思議とおかしいい。ほのぼの燗…じゃない、ほのぼの感がありますよね。そこが救われるっていうか。おすすめです。

ほのぼの燗、変換ミスですが旨そう…。

投稿: カンザワユミコ | 2005/10/12 14:31

「中年ゴジラ」はまだ読んでいません。
「その日のまえに」から始まって「流星ワゴン」をかたづけ、今は「きよしこ」を読んでいるように、重松清さんがマイブームなので、近々に読んでみたいと思います。
浅田次郎さんも泣かせるのがうまいですが、登場人物がある意味スーパーマンなのに比べ、重松さんの登場人物はごく普通の人であるところが良いな、と思います。

“ほのぼの燗”、良いですねえ。哀燗、情燗、脱力燗・・・。燗をつけると、不思議とそういうお燗が有るような気がして来ますねえ。

投稿: 地酒星人 | 2005/10/12 15:08

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