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2005/09/01

地酒の怪談(2)

地酒は人の手によって造られ、また売られる、ひじょうに人間くさい商品です。
そしてそこには、人々の様々な思い、想念が行き交うことになります。
その事は、いろいろな「怪」を生み出すことにつながっているのです。

またまた地酒にまつわる怪談です。
お閑があったら読んでみてください

地酒の怪談(2)



視 線



昭夫の経営する店に、その女性蔵元が


やって来たのは秋風の立つ頃だった。


真面目な感じでスーツを着込み、固い表情をした女性だった。


年は27、8くらいだろうか。


昨シーズンから杜氏になりかわり、自分で造りを


行うようになったとの事だった。


都内のこれはと思う酒販店を巡り、直接に取引を


お願いしているとの事だ。


かつてはその地方では中堅としてならした蔵だったようだが、


数年前に名杜氏が引退し、それから造りが思わしくなくなったようだ。


蔵元自らが造りを行う事の多い昨今、配水の陣で


自分も造りを行ってみたとの事だった。


本醸造から純米吟醸までの数本の利き酒をしてみた。


一つづつ酒を利く昭夫を、女性は食い入るように見つめている。


特別純米と吟醸がおもしろいと感じたので、


20本ずつ置いてみることにした。


その女性蔵元は固い表情に苦しげに笑顔を作り、


何度も礼を言って店を辞していった。





その数本は昭夫の店の常連客を中心に捌けて行った。


客の感想を聞いてみると、おおむね好評であった。


好評ではあるのだが、感想を語る客の表情が何とも冴えない。


理由を聞き出そうとするのだが、判然としない。


良い酒なのだが、なんか変な感じがする、とひとりの客が言った。


でも、それが何かわからない、と。


やがて、霊感の強い常連のヤマちゃんがやって来て、言った。


「昭夫さんさあ、この酒、やばいよ。」


「え、なにが?」


「夕べ呑んでてさあ、なんか感じるんだよ。」


「だから、何を。」


「なんか、見られてる感じがするんだよ。」


「誰に?」


「・・・酒に。」


「は?」


「酒に見られてる感じがしてさあ・・・。」


「酒に?」


「そう。それで、こう、ちょっと横目で瓶を見たらさあ。」


「・・・。」


「なんか、女の顔が映ってるんだよ。」


「え・・・」


「女の顔。一瞬で消えちゃったんだけど。」


「ヤマちゃん、それ部屋に彼女でも・・」


昭夫さん、オレの部屋に女が居るわけないでしょう。」


「まあ・・・ね。」


ヤマちゃんはこの酒を知り合いの霊能者に見てもらうという。


半信半疑だった昭夫は、結果を教えてもらうようにたのんだ。





しばらくして、件の女性蔵元から礼状が届いた。


昭夫の店で完売した礼と共に、酒が県知事賞をとった事を知らせる手紙だった。


封筒の中には、県知事と一緒に写真におさまる女性蔵元の姿があった。


「・・・?」


少し違和感を感じたのは、女性の印象が随分変わっていたからだった。


店に来た時はひじょうに固い印象だった彼女が、


自信をつけたのか、柔らかい微笑みをみせていた。


その日の午後、ヤマちゃんがやって来た。


昭夫さん、霊能者の先生のとこへ行って来た。」


「あ、そう。で、どうだった?」


「うん・・・生き霊だって。」


「生き・・・霊?」


「そう。霊はなにも死んだヤツだけじゃなくて、


 生きてる人間が、とても強く思い入れてる物にも憑くんだってさ。」


「じゃあ、あの酒には・・・」


「そう。誰かは知らないけど、女の生き霊が憑いてるんだよ。」


「・・・。」


ヤマちゃんには、この酒が女性蔵元が造った事は言っていない筈だと思い、


昭夫は背筋に冷たいものが流れるのを感じた。


すると、ヤマちゃんが言った。


「でも、大丈夫だってさ。もうかなり弱くなっているみたい。」


「弱くなってる?」


「そう。あの日、すぐに先生のとこへ置いて来たんだけど、


その日はかなり強かったらしいけど、今月の20日過ぎくらいからかな?


すごく弱くなったって。」


「・・・そうなんだ。」


昭夫がふっと息を吐いた次の瞬間。


「げっ!!昭夫さん、この女だっ!」


ヤマちゃんがテーブルに置いてあった女性蔵元の写真を見ていた。


「・・・あ、あれ?違うかな?・・・一瞬あの生き霊だと思ったんだけど、なんか良く見たら印象が違うなぁ。」


首をかしげながら、ヤマちゃんは帰って行った。


20日すぎ・・・そう、彼女が県知事賞をとったのは21日と書かれている。


おそらくは、張りつめていた彼女の気持ちが晴れていったのは、


受賞をきっかけとしたからなのだろう。


その酒に魂が乗り移るほど思い込んだ酒、という事だったのだろうか。




もうすぐ次の造りが始まる頃だ。


あの女性蔵元のところから来年はもう少し仕入れてみるか、と昭夫は思っていた。


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コメント

お~さぶいぼ出ました~前作を上回る怖さです!
でも、そこまで思いを込めて造った酒なら旨いんでしょうね~
私の過去を振り返っても
そんなに思いを込めて造ったものってないですね~

投稿: 酔ゐどれ | 2005/09/01 11:50

私もさぶいぼでました~。
でもでも、生霊なら害がないから怖くないですもん!
(あぁ、いっぱいいっぱい)

投稿: まき子 | 2005/09/01 12:21

《 酔ゐどれさん 》
>お~さぶいぼ出ました~前作を上回る怖さです!
そう言っていただけると嬉しいです。
夜なべをして作った甲斐があります(汗)。

>そんなに思いを込めて造ったものってないですね~
私の場合も、どうなんでしょうね〜、わからないですね〜。


《 まき子さん 》
>でもでも、生霊なら害がないから怖くないですもん!
そうとは、限らないですよ〜〜(って、怖がらせてどうする)。

でもブログって、簡単にいろんな人と交流できますが、その分、さまざまな想念を受ける可能性もあるかもしれないですよね〜(って、また)。

投稿: 地酒星人 | 2005/09/01 12:53

あまり、茶化さないで。
生霊であろうと死霊であろうと、怨念でないものは、受け入れてください。

毎晩、亡くなった時間に目を覚ましています。

投稿: 煮酒 | 2005/09/01 22:10

?!?!?!
煮酒さま・・・・・・それはどういう意味で・・・?!

投稿: まき子 | 2005/09/02 01:06

>怨念でないものは、受け入れてください。
たしかに。魂の存在が、人間と動物を分けるものですからね。

>毎晩、亡くなった時間に目を覚ましています。
なんか気になるのですが、もしお聞かせ願える事でしたら・・・。

投稿: 地酒星人 | 2005/09/02 11:09

ご想像の通り。
(~△~) ネム・・・

投稿: 煮酒 | 2005/09/02 15:41

あ・・・想像の通りでよろしいんでしょうか?
・・・んんん、なんと申しましょうか・・・

投稿: 地酒星人 | 2005/09/02 15:56

はじめまして。ココログの「お酒」カテゴリから入って辿り着きました。怖い話とか大嫌いで、普段は絶対聞かないのに、「地酒」というコトバにつられ、2話ともしっかり読んでしまいました~。夜に、また思い出しそうで非常に怖いです…。
ちなみに私は東北在住で、美味しいお酒に囲まれて(?)けっこう幸せな環境にあります(^∀^)。もちろん東北以外のお酒も好きなのたくさんありますが。
また、立ち寄らせていただきます~。

投稿: えぬこ | 2005/09/02 16:42

えぬこさん、初めまして。東北は旨いお酒がたくさんありますね!

>怖い話とか大嫌いで、普段は絶対聞かないのに、「地酒」というコトバにつられ、

そうです・・・この記事たちは、えぬこさんが来るのをここでず〜〜っと、待っていたのです。
(なんて、脅かしている場合ではないですね)。
毎日、何かしらの話題をアップしておりますので(地酒でない時も多いですが)、是非またいらしてください!

投稿: 地酒星人 | 2005/09/02 18:18

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