各駅停車の旅1《信州茅野でダイヤ菊編》
青春18きっぷを使った旅を計画した地酒星人。
遅くなってやっととれた夏休みを利用したひとり旅である。
一日目の目的は諏訪湖で行われる新作花火大会の鑑賞。その前に諏訪にある酒蔵を見て回りたいと考えていたので、逆算すると土曜朝7時50分四谷発の中央線特別快速に乗らなければならない計算だ。
しかし、金曜夜の段階で片付いていない仕事がまだたくさん有った。仕方が無いので、黙々とこなす。日付が変わったが仕方が無いのでさらに黙々とこなす。
なんとか目処がついたのは朝4時を過ぎていた。それから帰宅し、旅の支度を整えて1時間ほど仮眠、7時に起き上がり、トーストを口に入れてまぶしい朝日の中を駅へ向かって歩き出した。
四谷駅から中央線特別快速に乗り高尾へ。高尾から小淵沢行きに乗り、甲府で下車。甲府から松本行きに乗り、昼過ぎに茅野で降りた。
茅野。昔バイク乗りであった地酒星人にとっては、ビーナスライン起点の地としての印象が強い。
鉄道の駅は初めて降りたのだが、思ったより開けている。
始めに目指すのは「ダイヤ菊酒造」。
いつか訪ねたいと思っていた蔵である。
多くの人がそうであるように、やはり世界的名匠・小津安二郎監督が愛飲した酒として著名なダイヤ菊に興味が有ったのである。
蓼科に別荘の有った小津監督。別荘にこもって脚本を仕上げている時期に愛飲していたのがダイヤ菊。一升瓶が100本空く頃に、ようやく脚本が仕上がったらしい。
徒歩5〜6分くらいで蔵が見えて来た。
この蔵では酒蔵園という酒造に関する無料の展示スペースを公開している。入り口とおぼしき暖簾の出ているところへ歩いて行くと、シャッターが閉まっていた。
「?」と思って、きょろきょろしていると、「順路」と書かれた小さな案内板が目に入る。
入ってみると、そこはかつて蔵として使われていたとおぼしき天井の高い薄暗く広いスペース。そこに長野で生産されている様々な蔵の酒が並んでいる。そして、過去に酒造で使われていた道具の陳列。精米機や酒樽、櫂など様々な器具が造りの過程に従って陳列されていた。
そして最後にダイヤ菊の酒が並んでいる仕組みだ。ここではダイヤ菊のハッピを着た蔵元の女性が迎えてくれた。
この人がムチャクチャ面白い人だった。
とにかく自分の蔵の事なのに、セールストークを一切しない。逆にネガティブな事をしゃらっと言ってのける。しかも語り口が軽妙で関西系の発音が入っている為、ひじょうに笑える。(ちょっと雰囲気・キャラクター的に室井滋っぽい感じ)
「皆さんから夢を壊すような事は言ってくれるなと言われるんですが、ウチはただ松竹から言われて酒を納めていただけです。」
「小津監督が蔵を訪ねて来られた事は一度もありません。」
「監督はただ地ものを呑んでいただけです。その証拠に、東京からウチの酒を注文された事はありません。」
・・・あなた、そりゃ事実かもしれませんけど、なにもそんなにハッキリ言わんでも。
その後、大吟醸の雪舟と純米吟醸原酒を利き酒させてもらい、原酒が気にいったので購入。さらに、彼女がそうは言うものの、やはり小津監督が呑んだダイヤ菊に触れたいと思って聞いてみた。
「当時小津監督が呑んでいた酒はどれですか?」
すると彼女、
「ありません。」
あなた、そんなまた・・・。
「当時とは製法が違っているので、同じものというのはありません。」
そりゃそうです。
「ただ、当時の酒を知っている人は、この酒が似てると言われます。」
といって、普通酒を出してくれた。昔の二級酒だそうである。
もちろん、こちらも購入。
(本当はもっといろいろな話を聞いたのですが、迷惑がかかるといけないので記事にしません。)
蔵は現在、リニューアルしている最中で、今日入るのに迷った方の入り口は使わなくなり、もうすぐ新しく作った入り口から入る事になるそうだ。
その新装なった入り口まで送ってもらい、写真まで撮っていただいてしまった。
初登場の地酒星人(本人)。杉玉の下でご機嫌(?)
是非、蔵元さんの写真もとお願いしたいのだが、
「私なんかとんでもない。おばちゃんだし、いいです、いいです。」
といって固辞されてしまった。

でも、ちょっとだけ小さく載せちゃいます。ごめんなさい。
蔵の前には川が流れており、両岸にたくさんの緑があるのだが、その内にそこも住宅地になる予定との事。
時代にあわせ、したたかに生き残ってほしい蔵だと思いました。
尚、現在HPのリニューアルを外部業者に発注しており、間もなく一新されるそうです。蔵元の彼女の日記ページも出来るそうで、楽しみにしたいと思います。
今のHPを見てやって来たと言ったら、
「あれ、見ちゃいましたか・・・」と(苦笑)。
そりゃ、見ますよ。
茅野駅へ戻った地酒星人。諏訪へ向かって出発です。
(と言っても、ひと駅なのですが)
《明日につづく!》
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コメント
「松竹に言われて納めてただけ」ですかあ、キクなあ(笑)
ま、しかし小津ファンにとっては、監督が飽きずに実際飲んでいたという事実が重要なんで、依然としてダイヤ菊が特別な酒であることに変わりはないのです!(苦笑)
普通酒は常温で飲ると、結構いけるんですよね。
投稿: TOM | 2005/09/08 12:00
>依然としてダイヤ菊が特別な酒であることに変わりはないのです!
そうなんですよね。
ダイヤ菊さんも、「小津監督の愛した酒」と言えてしまえばセールスしやすいんでしょうが、権利関係もあるのでそうも行かないみたいですね。
投稿: 地酒星人 | 2005/09/08 12:25
いい!ですね、蔵元のおばちゃん?
書けないようなことまで話してくれる人、好きです。
おっしゃってることはごもっとも、という感じですよね。
これで酒そのものがおいしければ文句なしです。
レポート、お待ちしています。
投稿: みみず | 2005/09/08 12:51
お帰り!!!
一人旅・・・天候が怪しい中、どんな旅をしてたのか興味あり!レポート楽しみにしてます!!
投稿: 市っ子 | 2005/09/08 13:07
《 みみずさん 》
>書けないようなことまで話してくれる人、好きです。
ええ、なかなか良い味出してる人でした。
お酒の方も、近い内にレポートさせていただきます。
《 市っ子さん 》
ただいま〜!!
>天候が怪しい中、どんな旅をしてたのか興味あり!
いや〜、たいした旅はしてないんですが、今日から順次アップいたしま〜す。
投稿: 地酒星人 | 2005/09/08 14:26
ぶらり蔵元巡りですか。いいですねぇ。夏休み。
それにしても、ダイヤ室井、最高です。
「ウチはただ松竹から言われて酒を納めていただけです」
どははははははは!
いや、最初は「ウチはただ松竹梅から言われて酒を納めていただけです」と読み違えて笑い、よく読みなおして笑いで、オモロかったです。
投稿: 菱沼かれい | 2005/09/09 01:10
室井滋に似てるおばちゃん、面白そうですと言うより、面白すぎます。室井滋と日本酒と言う組み合わせが何とも言えず納得(笑)。
長野の人は商売下手なのかもしれません。「酒メッセ」に行ってもそう感じます。
投稿: 山輝亭 | 2005/09/09 07:59
《 菱沼かれいさん 》
>それにしても、ダイヤ室井、最高です。
本当に面白い人でした。
これからリニューアルされるHPでの彼女のコーナーが楽しみです。
HPでは取り澄ました事を書いていたら、逆に笑ってしまいそうです。
《 山輝亭さん 》
>長野の人は商売下手なのかもしれません。
この“室井さん”は、トークはうまいと思いますが、そういえば諏訪の蔵ではあまり販売に積極的でない感じはしましたね。
何か聞かれたら答える、みたいな人が多かった気はします。
話せば良い人だという事はわかるんですけどね。
投稿: 地酒星人 | 2005/09/09 11:39
地酒星人さん、写真がちっちゃくて顔がよく拝見できません~(涙)。
でも、リュックサックがなんだか若々しいです!
そして蔵元のおばちゃんもナイスです!
笑えました(笑)。
投稿: まき子 | 2005/09/09 13:25
いや、顔がよくみえても、何も良い事はありません(^^;)。
このリュックは重かったんですよ〜。
酒を入れるものだから余計ズシッと来ます。
投稿: 地酒星人 | 2005/09/09 13:37
え〜、皆さん。様々にコメントをいただきありがとうございます。
ダイヤ菊の蔵元さんの年齢に関する事でひとこと。
彼女の名誉の為に付け加えますが、彼女は“おばちゃん”と言うほどの年齢ではないのではないか、と思われます。もう少しお若いかと思われます。
実年齢を知るよしも無いのですが・・・。
特に抗議があったりしたわけではないのですが、ここに訂正させていただきます。
すべて私の文責によるものです。
ごめんなさい。
投稿: 地酒星人 | 2005/09/09 19:21
地酒星人さん
こんにちは、先日はご来店いただき有難うございました。
地酒星人さんの『道』をあらかじめ察知していたならば、もう少し控えめにお話して、おめかしした私をお見せできたのですが。
実は、私、ふふふ・・・自称浅野ゆうこ・・・なんです。
でも言われてみると、味のある素敵な女優さんなので、ちょっと納得。
それでは、またのお越しをお待ちしております。
投稿: 蔵元のおばちゃん | 2005/10/08 10:41
《蔵元のおば・・・お姉様さん》
いや〜、ビックリしました。まさかコメントをいただくなんて、思いもよらず(汗)。
好き勝手な事を書かせてもらっちゃいました。
伺った際には丁寧なご説明、ありがとうございました。それとHPリニューアルおめでとうございます。
ぜひぜひ宮坂園長の日記ページを作ってくださいよ〜。期待しています。
また長野へ行く際には寄らせていただきますね。
では、ダイヤ室・・・いや、ダイヤ浅野として頑張ってくださいませ。
投稿: 地酒星人 | 2005/10/08 12:21