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2005/08/28

地酒の怪談(1)

地酒は人の手によって造られ、また売られる、ひじょうに人間くさい商品です。
そしてそこには、人々の様々な思い、想念が行き交うことになります。
その事は、いろいろな「怪」を生み出すことにつながっているのです。

地酒にまつわる怪談です。
お閑があったら読んでみてください

地酒の怪談(1)





均は都心で地酒を中心とした酒屋を経営している。



去年、二代目であった父親が亡くなり



三代目である均がひとりで店を切り盛りしている。



自宅兼店舗の中規模の店である。



一階が店と地酒の保管庫。



二階に均夫婦と今年小学校3年の長男が暮らしている。



父親は亡くなる1年ほど前から痴呆の症状が出ており



夜中、地酒の保管庫の中に勝手に入っては



酒瓶を並べ替えたり、



時には封を開けてしまったりしていた。



夜中にガチャガチャと瓶を並べる音で目が醒め、


何度怒鳴ったかしれない。


しかし、亡くなった今となっては


もう少し優しくしてやればよかったかな、と



思ったりしている。


ひと月ほど前から、気になっている事があった。



音が、


するのだ。



夜中の2時過ぎ頃だろうか、



ガチャガチャと瓶を鳴らす音・・・。



多少弱々しくはあるのだが、



そう、まるで父親が居るような・・・。



店舗には厳重に鍵をかけており、



外から誰かが侵入する事は考えにくい。



均は真っ先に父親の事を思った。



とても階下へ見に行く気が起こらず



均はベッドの中でじっと息をこらしていた。



しかし、一日おきくらいに



その「音」がするようになると



そうも言っておれない。



ある夜、



意を決して階下へ降りる決心をした。




足音をしのばせて、階段を降りる。



保管庫には灯りはついていない。



冷蔵ケースの「ブーン」という低い音の他に



ガチャ、ゴト。ゴト、ガチャ・・・。



弱くはあるが、父親が酒瓶を



扱う際の音によく似ている。



一瞬、自室へ引き返そうと思ったが



このままではずっと睡眠不足が



続くと思い、均は意を決した。



そっと保管庫入り口の扉を開き




ドアのすぐ横手にある照明の



スイッチを押した。




そこにいたのは、



息子であった。



酒瓶を何本も床に並べ、



驚いた顔をしてこちらを見ている。



やがて、我にかえったように



泣き始めた。



均は全身の力が抜けた思いだったが、



息子を抱きかかえようと腰をかがめた。



夜、無意識に徘徊するというのは



子供にはよく有ると聞いたことがある。



息子を抱いた均はしかし



「!」



息子から酒のにおいがする事に気がついた。



それからは大騒ぎだった。



急性アルコール中毒を心配し、



救急の病院へ息子を連れて行き、



医者からも妻からも



散々、酒の管理がなっていないと



嫌みを言われた。



幸い、飲んだのはほんの一口だったらしく



特に問題は無いレベルとの事だった。



明るくなる頃、店へ帰り



保管庫の酒を片付ける事にした。




7本ほどの酒が床に出ている。



片付けようとした均の手が



止まった。



全部同じ銘柄の酒である。



この酒は父親が好きだった酒だ。



最近ではあまり売れないので



今年の春に取引を中止していた。



その売れ残りがすべて床に並んでいる。



そして、



封を開け



息子が飲んでいたのは



父親が一番好きな



特別純米だった。



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コメント

眠気がふっとんでしまいました。
夢中で地酒星人さんの文章を読みました。
行間空きって、怪談話に効果的ですね。
ちょっと、怖かったです。

投稿: きお | 2005/08/28 16:59

思わず読み入ってしまいました〜
でも、もし自分が死んだらお盆には、
自分の好きなお酒をお供えしてほしいなんて
虫のいいことを思っていましました。

投稿: 酔ゐどれ | 2005/08/28 21:58

おじいちゃんが乗り移った・・ってことですか?!

いやいや、そんなはずはない・・・

きっとオコチャマが、飲んで見たくて一口飲んでみただけですよね。ね?!

投稿: まき子 | 2005/08/28 23:30

この話が本当かどうかは別として、あと僕自身は全く霊感というのは持ち合わせていませんが、こういう不思議な話があることは事実です。僕には何にも見えませんが、関わったことはあります。子供は特に敏感なようです。もちろん、物理じゃ説明つきませんけどね。

投稿: あつし@暴飲族 | 2005/08/29 00:56

《 きおさん 》
>行間空きって、怪談話に効果的ですね。
本当はバックを黒くしたかったのですが、htmlに不慣れなもので・・・。
眠気をさましてしまって、ごめんなさい。


《 酔ゐどれさん 》
>自分の好きなお酒をお供えしてほしいなんて
そういう気持ち、わかります〜。自分だったら、なんの銘柄だろうなあ。


《 まき子さん 》
>きっとオコチャマが、飲んで見たくて一口飲んでみただけですよね。ね?!
そうだと良いのですが・・・。う、うん!そうです!きっとそうだ!(余計怪しい)


《 あつし@暴飲族さん 》
>この話が本当かどうかは別として
設定は酒屋に変えていますが、この話は基本的には知人から聞いた実話なのです。
>僕には何にも見えませんが、関わったことはあります。
うう・・・、そう言われてしまうと、聞いてみたくなってしまいます(怖)。
>子供は特に敏感なようです
意識が発達していない分、霊などの干渉を受けやすいのでしょうか。

投稿: 地酒星人 | 2005/08/29 10:41

台所のテーブルにコップに入れて料理の準備をしていたら当時小学生だった長男が一気に飲み干しました。「う、水じゃねぇ」って一口で期がつけよ…。

____________

 怪談…「息子を抱きかかえようと腰をかがめた。」
 このくだりの後「抱きついてきた息子の骨格は父そのものでした」ってのも好きだな。

投稿: 煮酒 | 2005/08/29 18:59

>当時小学生だった長男が一気に飲み干しました。
おお〜、大丈夫でしたか。将来が楽しみですね。

>抱きついてきた息子の骨格は父そのものでした」
それ、超こわ過ぎです。 (((゚▽゚;)))ガクガク

投稿: 地酒星人 | 2005/08/29 22:00

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