はるかなるポーの一族によせて…
ちょっと先週、酒の紹介を飛ばし過ぎましたので、今週は少し関係ない話を。
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地酒星人は子供の頃から漫画が大好きで、将来は漫画家になりたいと思っていた。様々な漫画が好きで読みあさっていたが、今でも名作中の名作と思っている作品がある。萩尾望都の「ポーの一族」である。
1972年から76年にかけて少女コミックで連載されていた少女漫画なのだが、これ以上の完成度の漫画を地酒星人は知らない。毎週連載されていた訳ではなく、ある程度の間隔をおいて、ある時は読み切り短編であったり、3回くらいの連載であったりしながら5年間にわたり人気を博した作品だ。その為、単行本にしてしまうと3〜4冊くらいにおさまってしまう。それでも内容は例えようも無く深い。今でも自宅の本棚に有るし、思い出すと読み返す。そんな作品は他にない。
「ポーの一族」は吸血鬼の少年エドガーをめぐる、数百年にわたる物語である。
物語の始まりは中世のイギリス。ある事件にまきこまれたエドガーは、14歳の時に吸血鬼の一族に迎え入れられる。自らが吸血鬼(ヴァンパネラ)となったのだ。吸血鬼になるという事は、死なない、肉体が年をとらないという事だ。すぐに人間から怪しまれてしまう為、ある土地に長く居続ける事が出来ない。その時点からエドガーの、数百年にわたる長い旅が始まる。同じく吸血鬼となった妹のメリーベルとの日々と悲しい別れ、後半は親友アランと織りなす孤独な旅の日々だ。様々な時代の普通の人々の前に、限られた期間だけ現れるエドガー達。その交流や葛藤を絶妙な筆致で描いている。死なない、年をとらないという事は限りなく別れを繰り返すという事だ。一見ドライなエドガーの中のナイーブな部分を萩尾望都は巧妙に描き出す。
そして、ある晩のエドガーとの出会いをきっかけとして時を超えた存在としての彼に気づくジョン・オービン。彼はその後の人生をかけてエドガー達を追い求める。さまざまな年代を通して痕跡を残しているエドガーという青い目の少年…。彼は時を超えて存在する同一人物なのではないか…と。
読まれていない方には、是非一読をおすすめする。やはり少女漫画なりの絵だったり、カット割りだったりするので、それらが苦手な方はつらいかもしれないが、我慢して読み進める内に、限りなく深い作品世界に気づかれる筈だ。
最も「ポーの一族」のエッセンスを感じられるのは24Pの短編「グレンスミスの日記」だ。この短編を読んでいただくと少女漫画という枠ではくくれない作品である事をわかっていただけると思う。
※出来れば、同じく短編「ポーの村」を読まれてからの方がわかりやすいかもしれません。
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う〜ん、地酒とポーの一族。変なブログになって来た(汗)。
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